マジメ女子の苦難

<前回の続き>※前回はこちら

昨日の夕方、教室に入ってきた女子は幾分緊張している様子でした。

(…無理もない。私は初めての先生だし、昨日お母さんと電話のやり取りがあったあとだけに…本人はやりにくいだろうな…)

そんなことを思いながら私は生徒を椅子に座らせ、自己紹介、中総体の話などを経てリラックスしたところで、「じゃあ、そろそろ勉強を」と切り出しました。

「何の科目でもいいよ。お母さんからは勉強のやり方が良くないって聞いてるんだけどさ・・・、どうなんだろうね~。まずは自分流に進めてみて」

女子がおびえないように、できるだけ優し~い口調で話すと、女子はおずおずと言いました。「来週漢字テストがあるからその練習をしてもいいですか?」

「ああ、もちろんOKだよ。じゃ、やってみよう」

私はそう言った後、目の前で見られてるとやりにくかろうと思い、その場から少し離れた所に移動。

そして女子はすぐにカバンから学校ワークとルーズリーフを取りだし練習を始めました。

遠巻きに練習の様子を伺うと、
女子はまずルーズリーフの右上に「漢字」とタイトルを書きました。

そして右下に日付!を入れ、
問題番号と読み方を書いたあと、
漢字を一個一個丁寧に書いていきます。

DSCF1960.jpg

練習の様子を眺めているうち、「勉強している割にはテストで良い点数が取れなかった」というお母さんからのメール文が脳裏をよぎりました。う~ん…確かにこれでは効率が悪いかも。

「よし!じゃあちょっといいかな?」
女子が9番目の漢字を練習しているとき、私は止めました。

「そのワークには漢字が22個あるね。この中から何問テストに出るの?」
「今までは20問だったので…多分同じぐらい…」

「そっか、ほとんど全部だね。今までの漢字テストはいつもこういう練習をしてたの?」
「はい!これで、今までは全部満点でした!」

「ほう!それはすごいすごい!
…でもね……、いま9番目の途中だけどさ、もう漢字練習始めてから40分経ってるよ」
「え…?ハハハ」

「あと13個残ってるから…このペースだとこれから終わるまでに1時間かかるね」
「…そうなりますね」

(やはりここだ…

「ウチの子、机には向かってるけどどうして点が取れないの?」というときの生徒は…決まって「マジメ女子」である。

たかが漢字練習に、タイトルと日付を入れるんだからこれはもう筋金入りだ。

漢字テストは満点のようだけど、20個の練習に1時間半かけていてはほかの科目まで手が回らないだろう…)

「ここはね…」

私は適当な裏紙を持って来て漢字練習の見本を書きました。

「例えばこの『足跡』は『跡』だけ10回も練習すればいいんじゃないかな?」

「『斜面』の『斜』は2行書いてもまだあやふやだったよね。2行じゃ足りないんじゃない?」

「逆に『大丈夫』はどう?知ってたら書かなくてもいいよね」

「先生だったら『斜面』『足跡』『一瞬』と3つ混ぜて書くかな。この方が忘れにくくない?」

などいろいろ言いましたが、女子は私の言うことを一つ一つうなずいて聞いていました。なんて素直なんだろう!

「おい、S!ちょっとこっちに来て!」

DSCF1963.jpg

私はこの日、中総体が終わってから自習に来ていた中3男子のS君を呼びました。

「あのさ、この漢字22個がテストに出されるとして、お前だったらどうやって練習する?」

S君に問題を渡して、私はすぐに女子に言いました。「この人は中3で学年1位なの。先生だけじゃなくてトップクラスの人のやり方も聞くといいよ」

S君は戸惑いつつもホワイトボードに向かってペンを持ちました。「ええ~っとですね、ぼくは…」

そう言って、「しげる」「すきま」などとひらがなを書いていきました。

「ぼくはまずこうやってまず問題を作ります。そして分かんなかったところだけ練習します」

「ほう、素晴らしい!さすがだね!」

私の感嘆に、はにかんだ笑みを浮かべるS君。ププ、こういうところはかわいいね。

続けてもう一人自習をしていた成績優秀の中2男子にも聞くと、S君とほぼ同じことを語りました。

「ほら、今の聞いたかな?」
私は女子の方を振り向いて言いました。

「やっぱり全部書く必要はないんだよね。分かんなかったところだけ集中してやればいいの。わかった?」

女子は笑顔になって「わかりました!」と返事しました。まあなんて素直なの!

この子はきっと伸びるだろう。

「私は今までのやり方で満点を取ってきました!別にそんなのいい!」という頑固者だったら終わってた。

この子はマジメだけど、素直なところがあるからいい。

「でね、大体今のようなことをやればいいんだけどさ、
でもまだあなたにとって一番大切なことを言ってないんだ。
それはね…」(つづく)

テーマ :
ジャンル : 学校・教育

プロフィール

hyperlearnig

Author:hyperlearnig
<塾長> 工藤 豪

大学卒業後、半導体エンジニアの道へ進む。
2年後脱サラし、生徒らとの一喜一憂をもとめて2000年に塾を設立。

地域の学力に貢献しているかは不明も、成績を伸ばしたいと考える彼らのために日夜奮闘中!

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