”揺らし”にかかる

「さ、次が難しい。この日付、この時間に星がどこに見えるかという話だが…はい、〇〇!」

端に座っている中3女子に当てると彼女は自信無げに答えました。「『ウ』…だと思う…」

(ゲッ!これ…難しいのにいきなり当たっちまった…)

もしかして学校でしっかり教わったのかな…と不思議に思い、近くの生徒らの答えを一瞬で盗み見ると、みんな「エ」としていました。(やった!)と心の中で叫びつつ、「エ」と書いている隣の生徒に当てます。「お前は?」

「エ…です」「はい、後ろ!」「エ…だと思います」「はい隣!」

そんな感じで次々当てていくと、前の人たちが「エ」と言っているので安心したのでしょう。最初の人は恐る恐る口にしていたのに、あとの人は胸を張って「エ」と言うようになりました。

始めに当てた女子の方をチラ見すると、彼女はガックリ肩を落としています。

最後に学年トップの連中に聞くと、こちらも「エ」と答えて、クラス全体に「これで決まったな」という空気が流れました。

生徒が答えるたびにホワイトボードに正の字を書いてカウントを取っていた私は、一対多になっているそれを見て言いました。

「これはさすがにね…みんな『エ』と言ったよね…これだけ偏るとなると…」それを聞いてさきほどの女子は首を横に振ります。

「はい、じゃあ正解はね……答えは……『ウ』ですっ!!!」

その瞬間「ええっ?」と一同。

その後、解説をやって終わりましたが、毎回こんな風に問題のたびに一人ひとり答えを聞いて回るわけではありません。

正解した女子は、普段から「私はバカだから」と言っていて、周囲の優秀な人たちと自分を比べて常に劣等感のようなものを抱いていました。

自分で自分を見限ってはいけない。私はその劣等感を取り払いたかった。

そして、今回…正解がその子だけというのが見て取れたので、自分以外が総スカンという状況をあえて知ってもらい、「そういうこともあるんだ」と自信をつけさせるためにやったのでした。

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「さて、一番の化学反応式だが、これはもちろんできなきゃいけない。当たって当然の問題だな、〇〇!」

その生徒は増田サボリマンの筆頭理事。優秀なのはいいのですが、ちょっとマルをもらうとすぐに余裕をかましてサボったりコケたりするお調子者です。

半年ぶりにやる化学変化のおさらいなので忘れていても無理はないのですが、答えさせる前に出来るだけあおってプレッシャーがかかるようにしました。

彼はちょっと動揺しながらも「2Cu+O2⇒2CuO」 と正解を口にします。

「ふ~ん……そっかぁ…はい隣」私はわざとガックリした表情を作って、もう一人のサボリマン、名取一中の男子に当てます。

「えっ?違うんですか?えー…えーっと…お…同じになりましたけど…」

(ほう、よく覚えていたな…)私は、心の中では感心しつつも絶対に表情には出さないようにして言いました。「はぁ~~……まあお前もそう言うと思ったけどね…はい、〇〇は?」

前回の校内テストで450点を超えた名取二中の男子に当てると彼は明らかに動揺して言います。「えっ?…えっ?あ…いや…2Cu+O2⇒2CuO…じゃ…ないんですか?」

「はぁ~~お前もかよ……まったくどいつもこいつもね……はい、隣」

こんな感じでため息交じりにもう3人に当てたところで、増田サボリマン筆頭理事がニヤニヤしだしました。うっ…気づかれたか…

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ここでネタばらししておくと、これは何もお遊びでやっているワケではありません。心理テストです。

こちらをご覧になっているお母さんは今度お子さんに試してみてください。

まず、勉強しているところに行きます。そこで例えばお子さんが問題集の解答欄に「2m」と書いていたとします。そのとき、横に解答の冊子があれば、それを手に取り中を開いて言うのです。「えっ?そこ2m?」と。

そのとき、お子さんが「えっ?間違った?」と言って、自分の答えを慌てて消しゴムで消すようなら…ちょっとマズいです。

勉強は本来、内容を理解したかどうかが一番大事なのに、その子にとっては当たったかハズれたかが最大の関心事になっています。

こういう人は、なぜ間違ったかを考えることなく、急いで自分の答えを消して、誰からも後ろ指を指されないようにとにかく正解を書き写すことに努めます。まるで頭を使わず手の運動に終始する。これでは絶対に成績が上がることはありません。

一方、「え?2mでいいはずだけど…」と自分の答えに自信を持っている生徒は素晴らしい。たとえミスしていても、こういう人は必ず伸びます。

なぜならそういう人は、ミスとわかったときに「え?どこが間違ったの?」と解説を隅々まで読んで、中身を理解しようと必死になるからです。

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最後に名取二中の女子に当てました。「やっぱりここまでくるとアンタしかいないね……さあ、〇〇さん答え言って」

今までのがハズレとは一言も言わないように注意しながら、そうとも取れるようにギリギリの線を攻めます。

最初に当てた二人はもうすっかり感づいたようでニコニコしながらやり取りを眺めていますが、その女子はかなり動揺しています。

「えっ…違うの…?あ!…2Cuの2が……あ…でも違うな…」

(負けるな…自信持って…!)

私はこみあげてくる笑いを懸命に奥へ押し込めながら続けました。「さあ、ほかの人たちに教えてやって!みんなに正解をバシッと言ってやってちょうだい!」

「え~っと……私も…同じですけど…」

「はい正解っ!」

途端に「なぁ~んだ~」「ドキドキしたぁ~」「間違ってるかと思った~」「いや、オレはもう分かってたよ、あれは引っかけだって」とあちこちから声が。

「オレの揺らしに屈せずよく言った。おめでとう」

「でも、心臓に悪いからもうやめて!!!」

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ジャンル : 学校・教育

プロフィール

hyperlearnig

Author:hyperlearnig
<塾長> 工藤 豪

大学卒業後、半導体エンジニアの道へ進む。
2年後脱サラし、生徒らとの一喜一憂をもとめて2000年に塾を設立。

地域の学力に貢献しているかは不明も、成績を伸ばしたいと考える彼らのために日夜奮闘中!

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