体験に来た人②

<前回の続き>

・中2男子(集団授業)

お母さんは、塾の方に夏ごろお見えになって説明を一通り聞きました。

「親戚の息子がこちらに通って一高に入ったのです。ウチのは全然そんなんじゃありませんがぜひお願いしたい」とのお話で、帰宅後すぐに塾に通うように子どもに言ったそうです。しかし、本人は行きたくありません。

体験授業の予約もされていましたが、「本人がかたくなに行きたくないというもので…」と授業の前日に申し訳なさそうにキャンセルのお電話をよこされました。

しかし、その後の期末試験の出来が良くなかったらしく、本人もこのままでは大変と思い、結局は体験に来ます。

この生徒、長身で体格がよく、気が優しいのかいつもニコニコ顔で、周りや上級生から気軽に声をかけられる人当たりの良い人物です。しかし、授業姿勢がよくありません。

椅子を引いてお尻を突き出し、長い上背を前に倒して、寝ながら問題を解きます。

(初日からこれではダメだ…)

私が指導する生徒ではないですが、彼のもとに近づいて背を起こすように肩をグイッと持ち上げました。

彼は相変わらずの笑顔で「ん?」と振り向きましたが、「姿勢よくやろうね」と言って私は自分の授業へ向かいました。

授業後9時半過ぎに戻ると、彼はみんなが帰ったあとも残って講師から計算の指導を受けていました。しかし、寝そべった姿勢は相変わらずです。

私はまず講師の方を注意しました。「あのさ、姿勢はちゃんとさせて。寝そべってたら頭に入っていかないから。それに教わる態度としてどうなの?俺はこういう姿勢の人に教える気にはならない。ちなみにこれはほかの人全体にも言えるから。もしそういう人がいたらきちんと注意するように」

その後、生徒の隣にしゃがんで言いました。「いいかい?勉強ができる、できない以前にさ、姿勢だけはちゃんとやろう。単語テストがひどくても宿題をやってこなくてもそんなに怒らないけどね、姿勢はダメだ。これだけは約束ね」

体験二日目、彼の姿勢はちょっと良くなり、机についていた胸が45度くらいまで起きました。

その様子を見て、まあ、これからだな、とほくそ笑みながら自分の授業へ。

*************

こちらでも、体験初日の人がいます。

最初の面談で、お父さんはこうおっしゃっていました。

「勉強で刺激を感じてほしいから本当はもうちょっと早く通わせたかったのですが、本人がやることだから本人がその気にならないと…と思って今まで待っていました。今回ようやく息子から話があったので…」

私が教室に入ると、彼はもう来ていました。

あいさつを済ませて、教材一式を渡します。やがて全員がそろって授業がスタート。

しかし……問題演習でたびたび手が止まります。習っていない問題は仕方ないとしても、計算問題や過去の英文法復習プリントでも遅れを取り、ミスがところどころ目立ちます。

でも、これもある意味仕方のないことです。塾生は普段からこつこつこの類の問題をやっているので経験値が違います。スピードと正確性に差があるのは当然だと思います。

私はサポートスタッフの五月女先生に、彼について教えてあげるように、指でサインを出しました。

彼の表情から結構緊張している様子が見て取れます。もし声に出してサポートに回るように言ったら、彼は劣等感を抱いてその後ますます固くなるかもしれないと思ったからです。さりげなくやるのがいいと思いました。

その後、休憩を挟んで図形や国語などのほかの問題演習に入ったとき、彼は隣の友人の手元をチラチラ見始めるようになりました。

もしやと思い、教室内を一巡しながら二人の答案を覗くと、正誤が一致していました。

……はい、これは大変よくあることです。ズルさとかではなく、正解を言わないと恥ずかしいと思ってやっているのです。

授業後、私は彼を呼び止めて肩に手をやり言いました。「あのさ…さっきのアレだけどさ…。隣の見て写してもしょうがないよね」

すると彼の身が一瞬固くなったように感じました。私はすぐに「違う、違う、怒っているんじゃないよ」と言って続けました。

「いいかい?一つ言っておくよ。オレはね…ほかの人とちょっと変わっているかもしれないけどさ…、当たりが素晴らしいなんてこれっぽっちも思っていないんだ。

 例えばさ……今、図形の証明やってるけどさ、アレなんてハズれていてもいいから、その人がどう考えたのかという方がすごく興味があるんだ。

 模範解答なんかつまらない。

 回りくどくても、それを自力で乗り切った人の方が魅力的だ。だいたいそういう人の方が伸びるしね。

 次からはさ……ハズれててもいいから思い切って書いてもらいたいなあ。

 さっきの単語とか国語もね、みんなにやってもらったけど、点数的には0点でも100点でもどっちでもいいんだよ。ま、0点ってのはちょっとアレだけどね(笑)

 例えば100点を取ったとしてさ、3か月後にもう一回やったら結構忘れて80点になったとする。

 逆にさっき50点だった人がね、悔しくて一生懸命勉強したら3か月後に90点になった。

 これはどっちがすごいのかって話だよね。

 だからさ……これからはできないのを恥と思わないでほしい。

 いいんだよできなくても、次にできれば!知らなかったら覚える!分かんなかったら考える!これがベストなの」

彼は私の目を見て話を聞いてはいましたが、顔はかなりこわばっていました…

はぁ~~……やっぱ目つき悪いのかなあ……

中3女子が笑顔で言ってたもんなぁ…「ウチのお母さん言ってました!工藤先生、人相が悪いね」って…。

はぁ~~マイッタな……この仕事……お母さんウケも大事だしな……メガネの縁とか……真ん丸にしてみっかなぁ……

ガックリしながらデスクに戻ると、例の斜め45度の体験生がまた居残り計算特訓を受けていました。

(橋本先生も頑張るな~、体験なのに…。ん?姿勢がさっきよりも良くなっている?)

いくらか垂直気味になった姿勢に目を細めていると、やがて10時なり、彼は計算を終えてニコニコ顔で帰宅。

すると橋本がこちらへ来て「いや~」と唸りました。「今帰った体験の生徒ですけどね……前回はちょっと標準クラスでもキツいかな、個別行きかなって思ってたんですが……見どころありますよ」

「ほう、どこが?姿勢はちょっとよくなったけどね」

「いやー、単語テストですよ。前回、範囲を予告していたとはいえ46問全正解ですからね。あいつだけです。文法はからっきしですけど(笑)」

「おお!こっちでも満点はいなかったよ。予告したのにだいたい2,3問はミスってた。あ、ちなみに増田のサボリマン2人はマイナス20ね(笑)」

「いや~あいつ…化けるかもしれませんね」

「あいつ…素直なのかもな。素直さが一番の伸びる要素だからな。今度来たら思いっきり褒めとくよ」

「ですね(笑)」

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ジャンル : 学校・教育

プロフィール

hyperlearnig

Author:hyperlearnig
<塾長> 工藤 豪

大学卒業後、半導体エンジニアの道へ進む。
2年後脱サラし、生徒らとの一喜一憂をもとめて2000年に塾を設立。

地域の学力に貢献しているかは不明も、成績を伸ばしたいと考える彼らのために日夜奮闘中!

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