「対決」 ~後編~

<前回の続き>

「よし!親にちゃんと言ってあるならOK!どれ、ワークみせて!」

まず、先にテストがある名取二中のを確認すると、どの人のもしっかり終わっています。ただ3人がまだなようで、残りを必死に仕上げています。

「ん?SとKとRはまだ終わっていないようだな。あとどのぐらいの時間で終わるんだ?」

普段の澄んだハープ音のような美声は封印し、あごを引き、なるべくドスの利いた低音が出るようにして語りかけると、3人は緊張気味に30分や1時間と返答。そのぐらいならば…許してやるか…(甘いかな…)

「本当は違反だけど、さっさとやれよ!
 さて…、次は増中だな…」

シュワちゃんのアイルビーバックをイメージしながら一段と低い声で話しかけると、3週間前に入会したばかりの男子がまず声をあげました。

「いやー、オレ、昨日の日曜スゲーやったー!終わらせるまでに7時間もかかったー!」

「な…なに?7時間?」

5教科300点に届かないその男子は、英数の基本がすっかり抜けてしまっている生徒です。だから、通常授業の月金に加え、新入生フォローの木曜特訓、さらになんとか結果を出すべく、テスト前だからおいでと言って土曜日も教室に呼んで補習を行った生徒でした。

普通、このぐらいの得点の生徒は集中力が続きません。来る日も来る日も特訓となると本当はイヤなハズ。

口数が少ない人なので内心どう思っているかは分かりませんが、これだけの特訓に加え、さらに日曜日自主的に7時間もやったとは。いくら宿題とはいえ…よくやったな…と思いました。

「いやぁ、すごいね!お前、今までこんなに勉強したことないんじゃないの?」

「あー、はい!オレ、今まで生きてきた中で一番勉強しました!」

まさか岩崎恭子の名ゼリフを知っているわけではあるまいが、自分でこれだけ言えるんだから相当なもんだ。今度のテストはきっと上がるだろう。

「さあさあ、O君に続いてお前らも!ほら、ドンドン提出してよ!」

いい話を聞いて気分上々で語りかけるも、後続者はなし。しかし、数学が分からなくてやってこれなかったという人もいるのでそこはやり方を教えながら一緒に問題集を埋めていきます。

そんな感じで授業時間終了のころには、増中男子4人を残して全員がワークを済ませて帰宅しました。

「さて…」私は残った生徒の方を向いて、どうしたものかと逡巡しました。

(問題はこのサボリマン四天王だ…。さっき提出して帰った人たちよりも優秀なのに…。しかし、ここで許してしまってはさっき家で7時間かけてやった男子が「な~んだ」ということになりかねない。ここはひとつ、約束ということで、やはり残ってもらおう。)

少し休憩を入れたあと「じゃあどれ、そろそろエンドレス……始めっか」と声をかけました。

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それから1時間半が過ぎ、時刻は23時。

「終わるまであとどのぐらい?」と各人に聞くと、生徒は「まだ2科目あるので…」とか「あと…6時間ぐらいですかね」などと答えます。

(6時間といえば、さすがの先生でも帰してくれるだろうと思ったか?甘い甘い!無駄無駄無駄無駄ぁぁぁ!!!)

と心の中では思いつつも、努めて冷静に言いました。

「今から6時間つったら…11+6=17…そうか~朝の5時かぁ~。しかたねえなあ、付き合ってやるかあ」

そう言って生徒らの顔をちらっと見ると、それぞれ口元を歪め、引きつった笑いを見せます。

そこからさらに30分が経ち、23時半。私はそろそろ頃合いかと思い、温かい緑茶を差し入れして、生徒らの机の前に腰かけました。

「さ、お茶でも飲みながら聞いてくれ。

さすがに日付超えるといろいろ問題があるからさ、今日はここまででいいよ」

そう言うと、生徒らはホッとしたのか、安堵の表情を浮かべました。

「お前らさ、さっきの聞いたか?O君の話。昨日7時間かかってワークを仕上げたっていう話な…いやー素晴らしいね。

あいつはお前たちのように勉強が得意ではない。でも、やることはやったんだ。それって大事だと思わないか?

お前ら、普段あんまり勉強しないだろ?ゲームやラインなどの遊びに毎日大忙しだもんなあ。

ただ、オレはそれでもいいと思ってる。こういうとお母さん方には怒られるかもしれないけどね(笑)

何がダメってね、お前らがテスト前でも本気にならないってことよ。

こないだみたくテスト前でもラインやゲームをやってるってどうなの?ダメだろそれは。

普段からコツコツとワークを進めているならいいよ遊んでも。毎日コツコツは女の子に多いタイプだけどさ。

テストのないときも、テスト前も、毎日2時間きちんと机に向かえるってんなら遊んでもOKだ。

だけどそれをやれないならさ…、さっきのO君のように、テスト前に7時間でも10時間でもドカッとやらないとダメだろ。

それが、『毎日コツコツもイヤだ』『テスト前にドカンとやるのもイヤだ』となったらさ、それは一体なんだ?

なんにもやらないけど、ご飯はくださいってか?

そんな人は生きている意味がないな。つーかまあ、そんなね…ここ一番で本気になれないようなやつはね…結局会社でも干されて仕事が回ってこなくなるから惨めになる一方だけどね…。

お前ら男だろ?将来結婚してカミさんや子どもを食わしていくんだからさ、ここ一番ビシッとやることやんないと!」

私はここまで言って男子一人一人の眼を見据えました。みんな分かってるかな…

「ワークは3日延ばそう。木曜までにすべて仕上げること。それでいいね」

「はい!」(一同)

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ジャンル : 学校・教育

プロフィール

hyperlearnig

Author:hyperlearnig
<塾長> 工藤 豪

大学卒業後、半導体エンジニアの道へ進む。
2年後脱サラし、生徒らとの一喜一憂をもとめて2000年に塾を設立。

地域の学力に貢献しているかは不明も、成績を伸ばしたいと考える彼らのために日夜奮闘中!

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