埋めるのが目的ではない

「そこ、2kmって赤で書いてあるけど、なんでか分かってんの?」

教室から教室へ移動しているとき、自習をしていた中3男子の問題集がちらっと目に留まりました。彼は中2の入会当初、学年で100番以下でしたが成績が上がって現在は40番くらいにいます。

問題集の最後の問いにバツがついてあって、隣に赤ペンで2kmと書いてありました。しかし、解き直した形跡はありません。そして彼はそのままページをめくって次の問題へ移ろうとしていました。

「今、次のページに行こうとしてたよな。直しやったの?」その男子の目を覗き込むようにして尋ねると、彼は「あ…いや…」と言って、恥ずかしそうに笑みを浮かべました。

「お前…まだそういうことやってんの…」あきらめ顔で彼を見つめると、彼も徐々にうつむき加減になります。

(結局……ここなんだよなぁ…)

私は要件も忘れ、ため息を一つつきました。

この人は、今では5教科400点取りますが、去年の春に塾に入ってきたときは250点台でした。そして毎日あれやれこれやれと特訓を施した結果、成績が上がったのです。

(400点取るようになってもまだ分からんか…)

彼を眺めながらどうしたものかと考えました。

様々な生徒を見て思うことがあります。それは結局、「どうしてだろう」「なぜなんだろう」と考えることができるかどうかが、成績を決めるすべてである、ということです。

成績がいい人は常にこの習慣を持っています。しかし成績が悪い人は「なぜ」と思うことなどそっちのけで、問題集を埋めることだけに奔走します。

こちらが生徒に特訓を行って、ポイントを無理やり詰め込めば一時的に結果は出ます。しかしずっと勉強についてあげられるわけではありません。

家庭学習など、一人でやる勉強で「なぜこうなるのか」「どうして自分の答えでは違うのか」と考える習慣がなければ、やがては成績が下がり他人に抜かれます。

(いつも言っているのに…。この生徒に……いや、同じことをしているほかの人たちにも…何と言ってあげたら気づくんだろう…)

帰りの車の中で…風呂で…布団に入るときに…、ずっとそんなことを考えながら眠りにつきました。どうすれば、どうすれば、どうすれば…

日曜の朝、遅い時間に目覚めて、ふと小5の長男の部屋へ行きました。みんな野球に出かけて家には誰もいません。

(最近、全然構ってあげてないな…)周囲を見渡し、何気なく算数の問題集を手に取りました。

(たしか学校の成績はとても良いと聞いていたが…)そんな思いで問題集をパラパラとめくると…なんと…あいつもか!

算数の文章題で、途中式が全くなく、赤ペンで答えだけ書いて済ませている箇所がいくつかあったのです。

(はぁ~~そんな…)全身の力が抜けましたが、まだ固まっていない今のうちに何とかしないといけない。

ということで、家に帰ってきたあと「ちょっとこっちへ来い」と呼びました。子どもは私が手にしている算数のテキストをチラッと見ます。一瞬ごくっと唾を飲み込んだように見えました。

「ここと、ここと、このページなんだけどね…」私はバツがついている場所を示しました。

「あー…、そこは難しくて間違っちゃった…」

「ふーん…ここは?」

「あ、それも分かんなかった…でもマルは多いよ」子どもは必死にバツよりマルの方を強調します。

「最近の算数のテストは何点なの?」

「ん~と、95点」

「へーすごいね。その5点のところは?」

「えっ?」

「どうして間違ったの?」

「え……ん~~…」

「どうして間違ったか分かってないの?」

「う、うん…」子どもはなぜそこばかり突っ込まれるのか不思議な面持ちでうなずきました。

「あのな、これだけは覚えておいて。

 お母さんはテストの点数をガミガミ言うかもしれないけどさ…、そんなの全然関係ないんだよ。95点でも0点でもどっちでもいいんだ。

 今、もしお前が0点と言ったとしてもさ、お父さんは全然何とも思わないよ。本当だ。」

私は安心させるように子どもの肩に手をやりました。

「点数なんかよりよほど大事なことがあるの。

 それはな…、どうして間違ったのか『考える』ことだ。」

子どもに理解させるためにちょっと間を開け、話を続けました。

「考えて、やり方が分かって、次に同じことを聞かれたら解けるようになっていること。これが一番なの。

 だから0点でも95点でも別にどっちでもいい。当たったかハズれたかなんてどうでもいいんだよ。

 それより、間違ったところがどうして間違いなのか、正しいやり方は何なのかが分かったかどうか。見直しをやったかどうかが大事なんだ。

 バツが多い人がバカなんじゃない。
 
 分からないまま放っておく人がバカなんだ。」

子どもはじっとこちらを見て聞いています。その後、テキストのバツの直しと、どうしてその答えになるのか説明するように言いましたが、果たしてこれで通じたのかどうか…

テーマ :
ジャンル : 学校・教育

プロフィール

hyperlearnig

Author:hyperlearnig
<塾長> 工藤 豪

大学卒業後、半導体エンジニアの道へ進む。
2年後脱サラし、生徒らとの一喜一憂をもとめて2000年に塾を設立。

地域の学力に貢献しているかは不明も、成績を伸ばしたいと考える彼らのために日夜奮闘中!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR