数学の文章題が解けない人

先日の授業後、講師の橋本が私のところに来てつぶやきました。

「いやー、Yさんなんですけど…」
「ん?どうしたの?」
「明日、テスト対策に来ますよね。そこで数学の文章題をやってもらえないでしょうか…」

中1のYさんは橋本が担当している生徒で、週1回数学の個別指導をしています。文章題が苦手なの?と聞くと、はい…と暗い返事。
「何回かやったんですけど…なかなかちょっと…」

弱り果てている橋本の横で、私はYさんのことを思い浮かべました。

Yさんは中1といってもまだまだ小柄で、バスに乗ったら小学生料金で済みそうな笑顔の可愛らしい生徒です。

翌日はテスト直前なので、まだ穴の多い理科や社会をやる予定でした。

(数学の文章題をやってすぐに点が取れるようになるならいいけど…理社を差し置いてまでやるとなると…ちょっとなぁ…)

私は橋本に言いました。
「文章題かー…あいつはなぁ…女の子中の女の子だからなぁ…」

すると橋本は不思議そうに聞き返しました。「え?と言いますと?」

「つまりさ…、例えばあいつは、花を見て心から美しいと思うタイプだよね。感情が豊かというか…」

「は?…はい」

「花を見て美しいと思うようでは数学は解けないんだよ。」

話を聞いて、橋本は私が何を言いたいのか理解できたようでプッと吹き出しました。

「俺らだったらさ…、花を見て『わあ、きれい!』と純粋に感動する前にさ…、
 
 この花がきれいなのは花びらの角度がどのぐらいだからとか、色合いがどうだからと論理的に考えようとするよね…」

私の話を聞いて、橋本や数学の勉強をしている男子高校生たちがドッと笑い出しました。

「でもピュアーな女の子は違う。美しい花を見て『わあ、きれい!』と純粋に、そのまま美しさを受け止めてるんだ。

 激しく感動しているから、論理的に分析とか考察することはできない。表面のできごとで完結しているんだよなぁ。

 これが精神的に成長して大人になるとまた違うんだけどね。

 公務員試験でも同じような数学の文章題が出るけど、昔は解けなかったのに解けるようになることがある。

 それは頭がよくなったからとかではなく、落ち着いてものごとを見れるようになったのがデカいんだよな…。

 だからあいつに言っといて。もっと世の中の汚い部分を勉強しないとダメだって。…ふふ、ウソウソ(笑)」

「ふふふ(笑)まあでもなるほどですねー。そういう部分ありますよね」

それぞれがそれぞれの思いを巡らす中、私はぼんやり言いました。

「でもねぇ…ときどき思うんだ…。女の子はそれでいいんじゃないかって…。

 数学の方程式をズバズバ解くような人はね…、うまく言えないけど、純粋な何か、温かい感情のようなものを失ってしまった人間だよ。ここにいるメンバーみんなそうだろ?」

話を聞いて橋本や男子高校生らはみんな苦笑しています。

「おい、S!そう思わないか?」理数科に通うある男子に話を振ると彼は言いました。

「ウチの学校の女子はみんなそうですよ(笑)」

「だよなぁ…。大学のとき、女の子ちょっとしかいなかったけどあれはヒドかったなぁ(笑)」

そんなことを言いながらみんなでいつの間にかバカ話をしていたら、橋本が言いました。
「高谷先生!高谷先生は…」

ギョッとして橋本の視線の先を見ると、女性講師の高谷先生がこちらへ歩いてきていました。
「え?なんですか」と高谷さん。

「いや!なんでもない!ちょっと橋本先生~!あ、いや、もちろん高谷先生は素晴らしい方ですから!」

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ジャンル : 学校・教育

プロフィール

hyperlearnig

Author:hyperlearnig
<塾長> 工藤 豪

大学卒業後、半導体エンジニアの道へ進む。
2年後脱サラし、生徒らとの一喜一憂をもとめて2000年に塾を設立。

地域の学力に貢献しているかは不明も、成績を伸ばしたいと考える彼らのために日夜奮闘中!

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