孤軍奮闘

「まさか、塾で勉強しているから安心…と思っているワケではないだろうな」

定期テストの得点がもう一つだった中2女子三人に、怒気を強めて言いました。どうも家であまり勉強している風には見えません。

そこで今度は、塾のない日にどのぐらい勉強をやっているのか尋ねました。

すると、愛想笑いを浮かべながら「2時間」「1時間ぐらい…」「今回はちょっと…」と答えます。

(少なすぎる…まったく…)

この3人、普段指導している英語と数学はまあまあだったものの、歴史で点が取れていないのがイタすぎます。

あれだけ時間を割いてまとめたのに…。

思えば教えているときからまるでチンプンカンプンでした。

安土桃山時代から江戸時代が範囲だったのですが、ここは普通、小学生でも、織田信長⇒豊臣秀吉⇒徳川家康という政権の流れくらい知っています。ところがこれが全く分からない…。一人は前回450点も取っている生徒なのに…。

そこで授業では、問題を解かせる前に、まずその3人の天下人と、楽市楽座や刀狩などの政策を表にしてまとめます。

それも、座とは何か、刀狩は何のためにやるのか、キリスト教を嫌ったのはなぜかなど、こと細かく説明しました。

「いいか、このまとめたので終わりと思うなよ!これを頭に叩き込むまでが仕事なんだ!

 これを部屋の壁に貼って、毎朝毎晩眺めて声に出して言うように!

 なあに簡単なことだよ。風呂上りとか、朝起きてパジャマから制服に着替えるときとかに眺めればいいんだから。

 これを毎日やっても覚えられない人がいたら…どうかしているな。これやって、ワークも繰り返し解いたら…社会はもう完璧だ。」

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勉強のやり方まで細かく指示したのですが…それを期間中ちゃんとやったのかと3人に聞くと、やはりやっていないとの答え…。

壁に貼れるようにわざわざこちらで真っ白な紙まで用意してポイントを整理したのに…。

あまりのやるせなさにしばし放心してしまいました。

ああ、おそらくセミの抜け殻ってきっとこんな気持ちなんだろうな、としみじみしながら次の質問へ。

「…わかったよ。まあ勉強法は人それぞれだからね…。ところで学校のワークはやったんだろうね」

まとめや暗記を飛ばしても、学校ワークだけはしっかりやっておかないといけません。結構ワークからまるまる出題されることもありますので。

まあいまさら人から言われるほどのことではないですが、さすがにこれだけはやっているだろうと思って聞くと、女子たちが顔を見合わせながら恐ろしいことを話し始めました。

「えっ?あれって提出?」

「えっ?そ、そうなの?」

「ううん、社会は違うよ!」

「だよね…あ~よかったぁ!ビックリしたぁ~!」

そう言って、それぞれホッと胸を撫で下ろしました。なんと、まあ!

「こ…こら…お前らっ!いったい、何言ってんの?こっちがビックリしたわ!提出じゃなきゃやんないってか」

女子連中の一人一人の瞳を鋭く覗き込むと、さっきの安堵の表情から一転、私の言ったことを理解したようで再び前の弱々しい微笑に戻りました。まったく…

「ホントに信じられない!いったい誰のために勉強やってんだよ。
 
 もしかしてお前ら、成績上がりたいって本心から思ってないんじゃないの?

 それじゃ、オレが一生懸命になっても親が応援しても上がるワケないわ!」

そして、手前に腰かけている、今回社会の成績が上がった女子に聞きました。

「おい、Yさん!お前は違うよな。学校ワーク、ちゃんとやったんだよね?」

すると、「あ…いやー…提出じゃないのでー…」と苦笑い。

「ちょっとちょっと…。おい、S君!お前は?お前はやったよね?」

焦って聞くと、S君はいつものポヤ~ンとした表情のまま緩やかに首を横に振ります。

「な…な…、ひ…ひどいな…二人ともやってないのかよ…。
 仮にそうでも…ここは流れを読んで『はいやりました!』と言うところだろ!」

クラスは大笑い。しかし、こういう話をしたいんじゃない。早く軌道修正を…

「じゃあ、なんでワークやってないのに上がったんだよっ!」

別の質問を投げかけるも、S君はしなびた植物のようにフニャ~っとして答えません。

「おいおい、光合成してる場合か!何やって上がったか言えっ!」

「カ…イ…カ…ク…」

「はぁ?!なにそれ」

全く持って意味不明。
「カ・イ・カ・ン」って、薬師丸ひろ子のモノマネしたかったのかなこいつ…。

「改革を…やった…」

その答えに辺りからクスクス笑い声が漏れます。

「お前さ…相変わらずだな…。その単語のブツ切り…やめてくんねぇかな。
 
 国語ができないやつの特徴ね。国語ができないやつは、普段の会話が単語のみで構成される…。もっとハッキリ言って!」

「改革を…見た…それを…覚えた…」

顔にある筋肉繊維が全て切断されたような表情でようやく答えるS君。

朽ち果てる直前のゾンビでももう少しマシな返答ができると思うが…これが現時点で精一杯か…。

「つまり何?享保の改革とか寛政の改革とか、オレがまとめたやつをちゃんと壁に貼って来る日も眺めたってこと?」

するとS君は愛くるしくニッコリうなずき言いました。
「それが…全部出た…解けた…」

「ほう、頑張ったじゃないか!」

私は後ろの女子3人に再度振りました。
「お前たちはどうなの?できたの?」

すると「いや…あの…」「いやーちょっとーフフフ」と濁します。

私はまとめに入りました。

「ほらな、学校ワークはやんなかったみたいだけど、オレの言った通りやれば上がるんだって!

 まずは言ったこときちんとやって!

 あと勉強時間もさ…試験前の平日で2時間とかありえないから!そんなんだから下がるんだよ!

 おい、Yさん、S君、お前ら何時間やって上がったのかみんなに言ってやって!」

Y「え、あ~いや~…2時間くらいですかね?(笑)」

S「…3……時間…(微笑)」

「び…微妙すぎる…。
 おい…そこはもちっと空気を読んでさ…大きな声で『5時間!』と答えるところでしょ、もう!」

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ジャンル : 学校・教育

プロフィール

hyperlearnig

Author:hyperlearnig
<塾長> 工藤 豪

大学卒業後、半導体エンジニアの道へ進む。
2年後脱サラし、生徒らとの一喜一憂をもとめて2000年に塾を設立。

地域の学力に貢献しているかは不明も、成績を伸ばしたいと考える彼らのために日夜奮闘中!

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